9/08/2024

11.

数百年前の旅の続き、いつか訪れた城へ再び客人として招かれたのは、導かれたのか、それとも探していたからなのか。昼間に城の姿を見ることはできず、夜まで待たなければならない。しかし、こちらの時の流れに合わせることはない。丘の中腹、橋を渡り、風戦ぐ草原の先へ。月の光に照らされた城の影から、一人の騎士が現れ出、異邦の客人を迎える。騎士は言葉を発しないが、ただ告げる、「私とお前は同じなのだ」。
 
王者の格を持って生まれた子、待ち望まれた者は、満を持してこの世界に現れた。幼子はすべてに守られていた。世界は誠実によって見通すことができる、そうあれかしと、あとはただ行くだけだと。

美しいもの、とりわけ景色や場所を守るかのように、小ぢんまりとしたひとつの花園を作ることに心を注いだのは、彼の終ぞ語られることのなかった、ある誓いのため。騎士は独り身ではあったが、決して孤独ではなかった。誓いは彼に手を重ね、鍵となり、どこへでも行くことができた。鍵は、そこにあるだけで充分だったのだ。

しかし、いつしか現れた、彼の静かな楽園に土足で入り込むものたちは、見つめ心和ますだけに飽き足らず、実際に手に収めないと満足することはない。たとえその手が腐り落ちようと、自らを省みるどころか花の毒や棘のせいにする! そして過剰に褒めそやすのが聞こえる、「綺麗な薔薇には棘がある」。
 
いかに楽園が暴かれようと、彼の誓いは揺るがない。それが不幸な運命をもたらすとしても、報いを受けるべきだと決意したのは、他ならぬ彼自身だ。戦いの前夜、流れ行く雲の下に立つ。彼は、自分も、仲間たちも、風の供をすることを知っている。そして、この景色を見ているであろう、いずこにいるはずのその人に語りかける。「自由に駆け抜ける我らの幼心を、どうか見守ってくれるように。私は運命の呼び声に応えよう」。
 
東の空が明るんできた。高々と聳える城も、私の前に現れた騎士も、みないなくなっていた。私にはまだ、やらなければならないことがある。たった一言の祝福と、決して消えない呪いが、かつて騎士が見たものと同じ、優しき最初にして最後の景色を私の眼に映す。