12/19/2024

2024/12/19

〈備忘を兼ねて、或る街についての記録〉


大きな直線道路を道なりに進むと、左側の遠くに大きな街が見えてくる。そこは多くの観光客が訪れる街で、主に二つのエリアに分けられる。

 

ひとつめは商業施設が集まったエリアで、「道路」からは二つの建物が特に目立って見える。一棟がまるまるスーパーマーケットになっている巨大な建物と、そのスーパーマーケットよりも大きい複合型商業施設。こちらのエリアは街の人々の生活圏でもある様子。「道路」とエリアとの間は広い林を挟んで離れている。このエリアに行くためには、「道路」よりもひとつ下にある別の歩道に降りる必要がある。


もうひとつは観光エリアで、こちらはひとつめのエリアとは大きく異なり、一帯が観光地になっている。二つのエリアにアクセスするには「歩道」を使うと片道15分ほどで行き来できる。観光エリアは全体を回れなかったので詳しくは分からないが、外観の似た建物が集まる小規模の観光地がさらにいくつかまとまっているようだった。今回見たのは坂の上にできた街で、「歩道」から直接石畳でできた坂道の通りに繋がっている。両脇に3~4階建ての比較的低いレンガ造りの建物が連なっている。建物は土産物や食べ歩きグルメ系のショップが大半。今回は夜間にこの場所に留まっている時間が長かったが、遅い時間でも多くの人で賑わっていたので、この周辺は他と比べて特に人気のある場所のように思えた。

 

上記の観光エリアの外れに、全体が黄色い外観のタワーがある。中はいろいろなテナントが入ったアミューズメントパークのようなもので、上層の方には映画館やゲームセンターがあった。最上階には屋上に繋がる階段がある。百貨店の屋上とよく似て、フードコートが併設された広場になっているようだった。知り合いの親子からたまたま近くにいると連絡を受け、タワーで待ち合わせることにした。


親子と合流し、一旦観光エリアに戻ってから、通りをエリアの反対側に15分以上歩くと、道が拓けて港に辿り着いた。ここにほとんど人はおらず、街の誰もがこの港を忘れているようだったが、私はかつて別の場所で同じ景色を、晴れた空と、世界の果てにただ広がる穏やかな海を見たことがあった。港にはいくつか小型船が停泊しており、そのうち一艘で乗船体験をすることができた。船へは私と親子、案内人の乗組員一人の四人が乗った。


親子と別れる時間になった。まだ船は港に着いていなかったが、親子は海の方へ去っていった。私は沖の遥か向こうにすでに小さくなった二人の人影を見た。次にまばたきをしたときには、二人の姿はもう見えなかった。やがて、自分も戻らなければと思った。気が付くと、船内の部屋で眠っていたようだった。部屋は暗くがらんどうで、家具や窓、さらに荷物の何一つなかった。すでに船は港に着いていた。私が降りるのを待っていた乗組員に礼を言い、街へ走り戻った。しばらく進んだところで、船に忘れ物をしていたことに気がつき、来た道を戻った。港にはまだ船は何艘か泊まっていたが、自分が乗ったはずの船はもうどこにもなかった。私は波止場から海をもう一度見た。海は変わらない朝の光を湛えて凪いでいた。